似て非なる英語・スペイン語の同根語
過去の記事で英語とスペイン語の比較について書いていますが、そこで同根語というものに触れました。
根っこが同じ、つまり語源が同じで見た感じが似ているという単語です。
そんな英語とスペイン語ですが、中には擬態をかましてくる単語も多く存在します。
今回は僕がスペイン語を学んできた中でこれはやられたという非同根語をほんの一部ですが、紹介してみたいと思います。
それは
です。
realizar
まず一つ目はrealizar。スペイン語に慣れてくると現れる単語ですが、英語の知識があると"realize=理解する、悟るなど"と同じ意味だと思ってしまいます。
だって似てますから。
でもスペイン語でよく使われる意味としては"実行する"というもので英語では"carry out"に近い感覚です。
英語のrealizeでも実行するという意味もあるようですが、僕個人の感覚ではあまり一般的ではないように思います。
ではスペイン語で英語のrealizeの対訳は何かというとdarse cuenta deです。
どこから突っ込んでいいのか非常に困りますが、よく目にする表現です。
動詞はdarで英語のgiveの対訳です。
seというのは別記事で書こうと思いますが、スペイン語の再帰代名詞でスペイン語の動詞では英語に比べて再帰代名詞を頻繁に使います(人称によって変わります、me, te, nos, vos)。
cuentaは名詞で英語ではaccount, count, checkなどが当てはまります。
deは前置詞で、たった1回の会話でもほぼ必ずといっていいほど出てくるもので、スペイン語になくてはならない前置詞です。
わかりやすく言えば英語のofにあたります。
recordar
これも1回見ただけで英語の"record"の生き別れの兄弟のように見えますが、意味としては英語の"remember"の対訳で、微妙に似ている程度です。
recordのスペイン語対訳としてはgrabarが当てはまり、街ですれ違っても絶対に気づかないほどに似ていません。
molestar
この単語はひょっとしたら広義では同根語になるかもしれません。
スペイン語のmolestarは「邪魔をする、苛立たせる」などの意味があり、英語でいうところの"bother"が対訳としてしっくりきます。
英語にもmolestという単語があり、molestarと同根語と思ってしまいそうですが、英語ではかなりきつめの意味で「意図的にいじめる、性的に悪戯する」と訳せます。
どちらも意味合いとしては相手にとって好ましくないものですが、使い方に注意が必要となります。
ちなみにmolestのスペイン語対訳としはabusar deが代表的です。これは英語のabuseに近い感じで、こちらは同根語と言えるかもしれません。
libraría
この単語は名詞ですが、どうでしょうか?
図書館という意味のlibraryをスペイン語っぽくしたように見えますね。
でもこれ、スペイン語では本屋なんです。
スペイン語で図書館はbibliotecaと言います。
当たらずも遠からずといった具合ですが、間違って使うと相手はちょっと困惑してしまいますのでやはり注意が必要です。
ちなみにスペイン語では名詞の後にríaがつくと(間の母音は変化する場合があります)、それを売っている店という意味になるものが多いです。
libraríaはlibre+ríaで、libreは本という意味です。
他にはzapatería (zapato=靴 + ría)は靴屋、pescadería (pescado=魚 + ría)は魚屋といった具合です。
embarazada
こちらは形容詞で、英語のembarrased(=恥ずかしい、バツが悪い)に似てますね。
スペイン語で-ado/aおよび-ido/aの語尾は基本的に過去分詞なので、その辺りも含めembarrasedと同根語と思いきや、スペイン語での意味は「妊娠している」という、間違って使ってしまうと会話のキャッチボールができない人の烙印を押されかねません。
日常会話でも使う頻度の高そうな意味なので、特に注意が必要です。
恥ずかしいという意味のスペイン語はavergonzadoです。
jubilación
最後にjubilaciónですが、英語にもjubilationという同根語と思わしき単語があります。
英語の場合はあまり日常的なものではなく聞き慣れないかもしれませんが、「大歓喜・祝祭」という意味があります。
それに対し、スペイン語では「定年退職・リタイア」という意味で、英語のretirementが対訳としてしっくりきます。
なので英語で知らなくてもスペイン語で先に知るようになることの方が多いかもしれません(僕はそうでした)。
スペイン人の同業者と英語で話しているときにjubilationを話の流れ的に定年の意味で使っていたので、やはり同根語と誤解しやすい単語なのかもしれません。
まとめ
いかがでしょうか?
確かに英語・スペイン語間で共通の語源を持つ単語はたくさんありますが、微妙に違っていたり注意が必要な単語も数多くあります。
そんな違いの原因・足跡を探るのは学術的に非常に興味深いですが、それは語学の専門家にお任せするとして、今回はこの辺で。